2009年1月11日日曜日

010 公立中高一貫校のAO入試

 10日に、新潟県と熊本県の県立中高一貫校の2009年度の「入学者選考検査」が実施された、との報道がありました。

 公立の中高一貫校には、中学と高校の6年間の教育のつながりの弱いほうから順に、「連携型の中学・高校」「併設型の中学・高校」「中等教育学校」の3つのタイプに分けられています。
 そのうち、高校入試のないのは、「併設型」と完全6年一貫教育を行う新しい方の学校である「中等教育学校」です。
 今回、選考があったと報道されているのは、これら2つのタイプの学校の中学の入学選考です。

  公立の中学校は、法律により、私立の学校のような「入学試験」が出来ませんので、「選考検査」などの名前を使っています。私立中学入試のように、各入試科目の知識の量や理解度を「試験」するのではなく、「基本的な適性・能力を検査する」とのことで、名称を変えているようです。
 その内容は、熊本県の場合「国語、算数、理科、社会を組み込んだ適性検査(100点満点)と作文(40点満点)、面接(10点満点)」となっています。私立入試に比べて、作文の配点が大きいこと、面接が実施されることが、特徴です。この傾向は、他の都道府県立の中学校の「入学検査」にも見られます。大学で人気のある選考方法と同じで、「AO中学入試」と呼べる方法です。

 AO入試はアメリカから導入しました。筆記試験で判断できる「学力」だけではなく、学校内外の活動歴や家庭事情などの情報を総合的に判断して、時には本人面接も行って、入学者の選考を行うものです。 
 慶應大学が日本で初めて正式に入学選考の方法として実施しました。しかし、その後、他の大学に波及するに従って、本来の選考方法に「筆記試験」を加えると言う、本末転倒のAO入試になっているのが現状です。

 このような、日本でのAO入試の変質は、入学選考での平等・公正に対する日本的な考え方から生じていると、私は考えています。入学選考が「平等・Fair」出なければならないのは、日米共に同じです。しかし、「受験生個人の事情を考慮することが平等」と考えるアメリカに対して、「横並びの平等」の日本は、その内容に大きな差があります。
 本来は、面接でその受験者の事情・適性・人柄などの情報を入手して、他の要素とあわせて総合的に評価するのがAO入試です。しかし、面接で「違う質問をすると不平等」と考える日本の入試では、熊本県のように、面接の配点が1割と低くなるのは、当たりまえです。

 もっとも、入学審査で面接の評価を低くしてある本当の理由は、「子どもの適性を面接で見抜けない先生」が担当するからかもわかりません。(皮肉ですが!)

 今後の公立中高一貫校の入学審査で、本当の適性検査が実施されることを、日本のために祈ります。それが出来ないと、公立中高一貫校は、私立中高一貫校の大学受験で成果に対抗するための学校と成り下がってしまいます。
 (ごめんなさい。今回は、少し長くなりました。興奮して。)

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