2009年1月31日土曜日

030 携帯ゲーム機で勉強?

 携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」を使った学習を、大阪府の小学校で始めました。

  大阪府の教育委員会では、公立小・中学校20校に各40台の「ニンテンドーDS」を貸し出しています。そのゲームにを使った小学校での学習が始まりました。

 その学習は、ゲーム機の画面に、専用のペンで漢字や読みを書き込むもので、5年生35人が15分間行いました。この学校では、漢字に関心を持たせようと、漢字検定試験に取り組んでいます。

 教育委員会は、ゲーム機を貸与している学校で、使用前後に小テストを実施し、学力向上の効果を測定する予定です。都道府県単位で携帯ゲーム機を導入するのは、初めての試みだ、そうです。

  日本で大人気のゲーム機の学校での学習への導入です。

 先日、我が家を訪れた日本の高校生は「英単語」のクイズを、生まれも育ちで会社勤めの我が娘も「漢検3級は合格!」と、このゲーム機の利用者が広がっています。二人に聞いてみたところ、回答に対するコメントや点数が表示されるインターアクティブな機能が効果的なようです。

 漢字や英単語など覚えるのに繰り返し練習の必要な学習では、この機能が子ども達の練習の動機付けに大きな役割を発揮すると期待しての導入でしょうか?

 このインターアクティブな機能が、自分の代わりにややこしい計算をしてくれる電卓との大きな違いです。電卓を使うと、「計算手順や方法が身につかない」と、日本の小学校の教室で使われていないようです。

 実は、私自身、アメリカにいながら早稲田大学のクラスをオンラインで教えています。50人以上の受講生が、私のビデオ講義を自由な時間に見、課題をEメールで送るなど、インターネットをフル活用した対話形式の授業をしています。しかし、インターネット上でも、教室内でも良いのですが、「元気?質問は?」と声をかけて上げるのが、一番の動機付けになっています。

 新しいIT機器がどんどん生まれてきます。それらを利用した新しい形のトレーニングや教育が出てきますが、教育での利用には、このインターアクティブな機能が欠かせないと思っています。

 しかし、教育にはヒューマン・タッチが必要です!


2009年1月30日金曜日

029 UC:出願数記録更新

 州立カリフォルニア大学への、2009年秋入学の出願者数がこれまでの最高でした。

 カリフォルニア大学(University of California, UC)の、学部新入生を受け入れている9キャンパスへの入学希望数が、昨年より2.9%増えて約98000人を記録しました。カリフォルニア州内からの出願は1.6%増の80,730人、州外からは10%増えて17,272人でした。

 キャンパス別に見ると、 UC Los AngelesUCLA55,610人(入学定員4190人)、UC Berkeley 48,616(4550)UC San Diego 47,032人(3625人)と続きます。また、9月から一番多く入学定員が減るUC Irvine44,072人(入学定員3859人)でした。

 また、大学3年生への転入学(transfer)希望者は、11.2%増の28,699人ありました。

 UC関係者の話では、自宅通学希望者が多いようで、高校卒業生の多い大都市周辺のキャンパスへの入学希望の増加が目立っている、とのことです。

 合格発表は、2月から3月にかけて郵送されます。

出典:Los Angeles Times, 2009124

 州立ですが、「A World-class Education」を謳うUCの出願状況です。

 1、それぞれの大学の入学競争率は10倍以上、UCLA13倍を超えています。東部の私立有名大学でも10倍程度ですので、州立でありながら同じくらい入学が大変になってきています。

 2、自宅からの通学希望者が多いという傾向は、やはり経済状況の影響が大きいようです。

 31年への新入生に比べ、3年への転入生の増加が大きいのは、授業料が20分の1くらいのコミュニティ・カレッジで最初の2年間を学んで学費の節約という、授業料値上げや経済危機の影響が大きいのでしょう。


 日本でも国立大学への出願が始まりました。どんな状況でしょうか?

2009年1月29日木曜日

028 滞日外国人用の日本語表現集

 日本で生活する外国人が「できるようになる」ことが期待される日本語表現をとりまとめ。日本語教育のカリキュラム作成などを目指す構想を、文部科学省の文化審議会国語分科会が発表しました。

 日本に住む外国人が増えるなか、日本での日常生活に必要と考えられる場面で使う日本語の表現をとりまとめようとするものです。

 まず、「健康・安全に暮らす」「子育て・教育を行う」などの項目に分類した「生活上の行為」のリストが公開されたました。このリストは、大・中・小とより細かい分類にレベル分けされています。小分類の「育児をする」は「母子健康手帳の管理、乳幼児健康診断の受診、子供の医療費助成の申請」を目的としています。

 「標準的な日本語教育カリキュラムの開発」「日本語教育教材の原型の作成」「外国人に必要な日本語能力の評価・方法の作成」が、今後の課題としてあげられています。

参考: アサヒ・コム 「日本語、これだけは覚えて 滞日外国人向けに具体案」 2009127

☆ 

 今回は、日本に住む外国人のための日本語のお話です。

 最初に、この記事に興味を引かれたのは、「こんな英語の表現集があったら、良かったのになー」と思ったからです。
 アメリカの生活が短く、英語やアメリカでの生活の仕方に戸惑っておられる方は、必ず賛成されると思いますが?

 次に、ちょっと引っかかったのは、「え、国で決めるの?」です。
 まさか、ここで作成を検討している外国人用日本語表現集が、「国定教科書」になることはないでしょう。この報道にも「標準的な」「原型」の言葉が入っていますので。たぶん、文部科学省が見本を作って、それを参考に出版会社が「独自の教材」を作るのでしょう。

 それにしても、独自性を持った州の集まりであり、多様性に富んだ人々が共生しているアメリカ合衆国では、こんな教材開発の発想が、国のレベルで審議されることはないでしょう。

 ここで紹介した日本のやり方が望ましいかどうかが、私自身わからなくなってきました。たぶん、アメリカに30年も住んでいるからでしょう、皆さんは?

2009年1月28日水曜日

027 国際理数学力試験(3):理科


 今回は、国際学力試験(TIMSS-2007)の48年生の理科の結果の国別成績を紹介します。
日本語のサイト: 国立教育政策研究所 

  これまで紹介してきた算数・数学に加えて、TIMSSでは理科の学習到達度の試験も実施しています。

 下の表は、4年生参加36ヵ国、8年生参加48ヵ国のうち上位の国の点数を、得点順に並べたものです。青字で示したのは、特別参加地域です。
 (点数は、0-1000点の範囲で、全参加国の平均点が500点になるように、統計的な処理をされています。)

 

4年生 理科
  1, Singapore  587
  2. Massachusetts   571
  3. Chinese Taipei  557
  4. Hong Kong   554
  5. Minnesota   551
  6. Japan  548
  7. Russian Federation  546
  8. Latvia  542
  9. England  542
10. United States  539
11. British Columbia  , Canada  537
12. Hungary  536
13. Ontario  , Canada  536
14. Italy  535

8年生 理科
  1.  Singapore  567
  2.  Chinese Taipei  561
  3.  Massachusetts   556
  4.  Japan  554
  5.  Korea  553
  6.  England  542
  7.  Hungary  539
  8.  Czech Republic  539
  9.  Minnesota   539
10.  Slovenia  538
11.  Hong Kong   530
12.  Russian Federation  530
13.  OntarioCanada  526
14.  British ColumbiaCanada  526
15.  United States  520

 この理科の試験結果から、次のような傾向が指摘できます。

 1、東アジアの国々が、最上位を占めている。
 2、マサチューセッツ州が、最上位グループに入っている。
 3、ミネソタ州は、4年生の理科で、日本以上の成績を上げている。
 4、アメリカ、さらにカナダの諸州も善戦している。

 次回は、最終回として、TIMSS-2007の全体的な傾向について、お話しします。

2009年1月27日火曜日

026 海外での日本語教育


 昨日のブログに関連する、ちょっと古い記事を紹介します。

 日本政府の「留学生30万人計画」の実現にもつなげるため、独立行政法人国際交流基金は、「海外の日本語教育拠点を3年で100ヵ所以上に増やす計画」を進めている。

 国際交流基金(Japan Foundationは11の海外事務所や現地の大学などで、日本語教育の普及につとめてきた。これらの海外事務所などを拠点に選び、日本語教育をより充実させることにした。拠点は20083月末までに31ヵ国39ヵ所に設置済み。

 「留学生30万人計画」実現のため、海外の拠点を増やして日本語教育を充実させることが、日本への留学を目指す若者らの「すそ野」を広げることにつながると判断した。

(アサヒ・コム 2008426日)

 こちらは、昨日の記事です。

 タイで中国語学教育機関「孔子学院」激増
 過去2年あまりで、タイ国内の大学・高校に設置された「孔子学院」が、東南アジアでは最も多い13に上り、その活動が目立ち始めた、との報道です。

参考までに。

孔子学院
 中国文化や中国語などの教育及び伝播のために、世界各国に設立された語学教育機関。
 中国政府が国家プロジェクトとして2004年に開始し、2010年までに500校、海外の中国語学習者を1億人を目標とする。世界では200411月にソウルに、日本では2005年に立命館大学内に最初に設立され、現在、78ヵ国に295の孔子学院がある。
 世界各国の大学などと提携して学内に設置し、中国政府が運営費など毎年2030%を補助する。


 

 自国の言語や文化を、世界に広げる。英語のブリティッシュ・カウンスル、ドイツ語のゲーテ・インスティテュートなどが有名ですが、中国の「孔子学院」の急激な展開ぶりには、世界各国が注目しています。特に、それぞれの国の大学など公共教育機関の中に中国の国策の「孔子学院」が入り込むことで、特定の影響力を行使しているとして、批判する政府が出てきています。

 「日本語教育拠点を100カ所に」の計画は、この中国の「孔子学院」の急激な展開への対抗策と、「留学生30万人計画」の実現の「一石二鳥」を目指したものです。

 しかし、たった6年で500ヵ所の中国、これから3年で60ヵ所追加で100ヵ所の日本。この差が、文化面での世界における中国の存在感をより大きくするのでは?

 やっぱり日本は「発信」よりも「受信」の得意な国?