アメリカの教育の世界でよく使われる「accountability」。この言葉の日本語訳は「説明責任」ですが、その使われ方が違うようです。
School Accountability Report
全米の多くの州では、「公立の学校が地元コミュニティに、その学校の情報を伝える」ことを要求しています。毎年、学校によって発行されるレポートが、一般的に「School Accountability Report(SAR)」と呼ばれます。
このレポートは、学校の事務室へ出向けば印刷された物が入手できます。また、学校区や学校のホームページで読むことも出来ます。それには、それぞれの学校の教育目標・学級編成・児童生徒や先生・カリキュラム・学業成績、さらに財政状況などが記載されています。
アメリカでは、地域コミュニティの住宅の不動産税が学校の運営費の一部として使われており、学校の評価と地域の住宅価格が連動しているのが普通です。
そのため、学校区や学校は安全で質の高い学校を地域に提供する責任を与えられています。その責任を果たしていることを、地域住民に説明するために、SARが発行されています。
「責任を果たしていることを評価してもらうための説明・報告の義務」が、アメリカでのaccountabilityの使われ方です。
「accountability」の日本語訳は「説明責任」が一般的で、教育だけではなく、政治や経済・企業の社会でもきくことが多くなりました。ところが、この訳語は「説明をする責任」、すなわち「情報を公開する責任」という意味で、日本では使われています。
学校内で発生したいじめによる事件を保護者に公表しなかった校長は、「説明責任を果たしていない」と責められます。重要な情報を公表していなかった政府は、野党に「説明責任」を問われます。
逆に、いじめの発生を、マスコミが報道する前に保護者に話していれば、その校長の「説明責任」は問題にされることはありません。
日本とアメリカの「accountability・説明をする責任」の使われ方の違いは、「何に対する責任」かの違いにあります。
「発表されたSARで学業成績が極端に下がったことが判明した学校の校長は辞職させられる」のがアメリカのaccountability、「学校内で発生したいじめを、外部に漏らさず隠した校長が早期退職」するのが日本の「説明責任」、の違いです。
外国語の言葉を、その言葉が持つ本当の意味が伝わるような日本語の言葉に置き換えるのは、大変な作業です。そして、その訳語の使われ方が、文化の違いを表しているようです。
皆さんは、教育で使われる、こんな言葉の例を知っていますか? 何か、ご存知ならば、教えてください。
0 件のコメント:
コメントを投稿