今回は、これまで紹介してきたTIMSS-2007の結果と傾向をまとめてみます。
技術革新・情報化の時代、さらには国際競争・グローバル化を背景に、数学・理科の学力に注目する国の政府が多くなり、TIMMSへの参加国・地域も増えてきています。
また、カナダとアメリカは、教育行政の主体が州にあることを反映して、いくつかの州が単独でこの調査に参加しています。
紹介してきた4年生・8年生別の算数・数学と理科の結果の、大まかな傾向をまとめてみましょう。
国別の比較
国別の成績を見ると、シンガポール・台湾・香港・韓国の東アジアの国・地域が上位を占めています。もちろん、日本もこれらの国々と互角と上位を争っています。
東アジア地域の国々は、世界と比較すると、文化的伝統の中で「教育」が非常に重要な位置を占めています。それは、家庭での教育へ熱意と貢献に始まり、学校での成績中心の教育として現れてきています。十数年前のバブル経済に象徴される日本の繁栄に追いつけ・追い越せと、教育に力を集中させてきた韓国・台湾の近年の成功例を見ても、東アジア地域の「教育」重視の姿勢が読み取れます。
そして、世界の国々は、東アジアの教育をモデルとして、教育に大きな努力を払い始めています。今回は紹介できませんでしたが、TIMSSの過去の結果と比較した時に、成績の伸びが著しい国々の中に東アジア以外の地域の国が多く入っています。アメリカも成績の向上が見られる国に入っています。
しかし、日本の成績は「横ばい」または「低下」の傾向を示しています。これが、日本の「国際的な学力低下」として報道され、政治家が改革を訴える、根拠の一つです。
TIMSSという、一つの国際学力調査の結果を、少し細かく紹介してきました。
その結果から、世界の主要な国々が、近い将来の国力の指標として学力調査の結果に注目しており、その成績の向上を目指して国レベルの教育改革を進めている、という現在の状況をご理解いただければ、幸いです。
最終回の次回は、TIMSSでみた「アメリカの学力」について、考えてみます。
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